ez-going’s diary

何かと失った男の戯言。

「気力を失った男」①

冬の間冬眠させていた愛車、古い250㏄に跨りエンジンキーを回す。

そしてかかりの悪いセルを押す。何度か目でようやくエンジンがかかり、アクセルを数度ふかしクラッチを握り、シフトペダルを踏みこむ。

クラッチとアクセルを交換するようにゆっくりと進みだし、徐々にシフトを上げてスピードを出す。一度目の交差点でシフトダウンし、クラッチを握って停止しようとしたとき、「ストん。。。。」

はぁ、やっぱりだめか。。。原因不明のエンストである。溜息と共にメットを脱いだ。

 

 

 昨年の今頃、勤務していた店がコロナで閉店し、運営会社からも解雇になった。まぁ、その店舗しか運営してなかったからそうなるのは仕方ない。なぜなら俺はそのために雇われていたからだ。

 

その時点で店自体はまだオープンして1年半しか経っていなかった。始まって2ヵ月ほどでコロナ騒動が起こり、すぐに最初の緊急事態宣言での休業。すぐに再開するもインバウンド狙いの店だったから客足はまばら。オープン当初800万ほどあった月の売上は最終的に4分の1以下にまでなっていた。

 

「そういうことだから、申し訳ないが解雇ということで。あ、それと何かと会社の不利になるから”自己都合”の退職で頼むよ。じゃ」

 

これが社長からの最後の連絡。なんともあっけない。

 

1年半前、「お前はうちに来たら絶対幸せになる。損はさせない。今やってる仕事より確実性は高いし、なんなら店が軌道に乗ればダブルワークにしてもいい。勤務の時間は融通するし、アルバイトのシフト管理とかだけやればいいから!」と必死に口説いてきた。その時とは正反対の塩対応だ。

この人物(社長)に少なからず恩義を持っていた俺は、悩んだ挙句ダブルワークにできるならと変な欲を出してしまい引き受けることにした。でもそれは間違っていたのかもしれない。

 

まぁ、傍から見れば自業自得。自己責任。先見の明なし。調子に乗るな。

 

いずれにせよ、昨年の解雇から1年。

俺は今、とんでもなく底がない泥沼に埋もれ、藻掻くにしても何のために藻掻くのかも忘れるほど色んなものを見失っているような気がする。

 

いっそ、藻掻くのを止めてこのまま沈んでいく方が楽なのではないかと思い始めている。陸に上がったところでさほど意味はないのかもしれない。

 

でも・・・

 

自己破壊と未来の想像の間で葛藤する苦悩が生きてる意味なのかもしれない。

この狭間でこれからも生きていくのか。

いや、とりあえず今は前に進む。

 

道の端に寄せて改めて暖気をしている愛車。

時折弱くなりながらも律儀にマフラーからアイドリング音を発している。

 

もう少し?ん?何が?

頑張る?何を?

 

とりあえず家に帰ろう。

話はそれからだ。